明け方の大気は夜の雨につつまれ、窓の外から、虫たちの鳴き声が響き、静けさを増している。北信州の秋はこれからますます深まっていく。短い紅葉の時期が過ぎれば、すぐに四度目の凍てつく白い季節が訪れる。
今日から大学がはじまるというのに、寮の中はそんな気配がしない。たしかに今日からだっただろか? 自分が大学生だったということが、なんだか思いだせない。大学生と自称することすら、何もかも忘れてしまったいま、とても恥ずかしい。「とりあえず、まずは図書館にいけばいいのか?」
卒業したあと臨時採用の教師をやる自信がなくなってきた。自分が何も知らず、未来に希望をもたず、理想ももたず、漠然とした価値観だけをもって、どうして子どもたちの前に立つことができるだろう? 「生活のため」だけに教師になることはできない。みみずくには、まだ、多くのことが欠けている。
信念をもてるようになる為には、あと、どこへ行き、何をすればいいのだろうか。それはどんな書物にも書いていないし、誰も教えてくれない。
きっと、生活にそこまで追われていないから、みみずくはこんなことを考えられるんだろう。それは幸せな悩みなのかもしれない。
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