今宵も月夜に導かれ、

あっちの止まり木へふわり、こっちの止まり木にふわり。

いったいどこへ行き着くのやら。

そんな「月夜のみみずく」の自分のための備忘録

みみずく23年目の現況

2009年10月30日

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みみずく父「印鑑、薄くていいんだよな?」




みみずく「だめでしょ!」


一ヶ月の交渉を経て、みみずくの親父より、家出の許可が下りる。実印をうやうやしく頂戴する。その際の父の御言葉。


父「この狭いアパートで一生暮らして、つまらない人生を送るんだな」


みみずく「・・・・・・」


うまれてこのかた3回目の引越し。予定通り、来月早々に、引越しをする。


「あたらしい塒」 それだけで気が休まる。一時的であっても。


家賃は35000、しかして月収の四分の一。みみずくの職場の社会福祉法人に土地を分け売った、大地主の所有するアパート。地主は近辺の山を所有し、アパートの隣の地主の畑を登っていけば、職場に着く。



  * * *



先が見えない毎日をなんとなく生きている気がする。上司から、嘱託勤務を勧められる。パート、嘱託、社員・・・・・・名もなき一社会福祉法人で一生を働くことをちょっと想像できない。


みみずくは教員免許を持っていて、それをとるために大学にいった。行かせてもらったといえばいいのだろうか。目標を持っていた。


いまはといえば・・・何も考えずにはじめた仕事を、何とはなしにしている。給料は安いが養うのは自分ひとりなので生活には困らない。


  * * *


介護の仕事は、顧客の見える一対一のサービスで、そのやりがいは感じやすい。仕事も、有機的な暖かさを持っているし、きついといわれる割には精神的な負荷は感じない。実績はあまり評価されないが、どの職員も、最大限の努力と愛情を注いでいる。


認知症のケアは、一瞬一瞬の場面が大きい。なにもかも直ちに忘れられてしまうから、その一瞬、どうその人を輝かせるかが本領である。教育とは違って、人を育てる過程を支えるのではなく、人が死んでいく過程を支えていくこと、社会を支える不可欠な仕事である。


けれども、といえばいいかだからどうした、といえばいいのか、先が見えない日々に不安を感じる。一流をめざしていったであろう、高校時代の仲間の顔が浮かぶ。


月夜のみみずくがぽつねんと一人、ろうそくの光を放っていて、


近くにはだれもいない。


ふっと消えても、変わりの光はたくさんある。


世界はたいしてかわらない? 無力感。


そう思ってしまうと何をするきも失せてしまう。


思わないようにこらえている。

朝の付き添い

2009年10月27日

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早朝五時から、毎日、親戚、近所の人、スタッフが交代で、一人の徘徊する入居者につくようになって一ヶ月あまりがたった。みみずくも、月数回、休みの日の早朝に入っている。食事につくまで、この人につきっきりで見守りをする。外を歩き回ったり、事務所で絵を描いたりする。

精神科医の投薬により、暴言暴力はなくなった。夜間もなんとか練るようになった。しかし、早朝目覚め、元気よく歩き回るこの方を、この時間帯夜勤者ひとりではとても見きれない。夜勤者はほかの8人の起床介助、排泄介助、排泄介助から食事の準備まで、短時間でひとりでこなさなくてはならないためだ。なにが起こるかわからないこの職場だが、なにも起こらなくても怒涛の忙しさである。

介護度は3である――もっとも介護度の高さと対応の難しさは関係しない――したがって、この人に適した特別擁護老人ホームに申し込んでも、なかなか入れない。待ち200番台という。

これから冬にかけてますます厳しくなる早朝、ただでさえ交通の便の悪い山の上のグループホームに通ってくれる一般の人はなかなか見つからない。

親戚も、これ以上スタッフの負担が増えることを望んでいない、といって代わりの人は見つからない。

山積する問題は、現場の数人の職員で話し合いを重ね、解決していく。上からの助けを待っていても来ない。

今回の話し合いでは、いい案が見つからなかった。

精一杯のことば

2009年10月22日

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若年性アルツハイマーで介護度は5、うなるばかりで言葉が話せない方の排泄介助をしていた。いつものように。


車椅子でトイレまで行き、そこからトランスして便器にうつすのだが、そのかたは、かろうじて立つ力があった。しかも今朝は珍しく多幸表情を見せていた。


み「○○さん、立てますか」そういっていつも手を引き立ってもらうのだが……


「たてません。」


み「!」


久しぶりのことばにびっくり。


つづいて電話がなった


「電話。」


みみずくはこんなに言葉を聞いて嬉しく思ったことはない。


五年まえは、自由に歩き、毎日でかけ、普通のご飯を食べていたらしい。介助もほとんどいならかった。しかしアルツハイマーの進行が早かった。

たったこの二言をきいただけでみみずくは元気になった。希望が湧いてきた。

新しい住処と病院行き、警察につかまるの巻

2009年10月17日

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来月からこの山の麓に引っ越す。職場は山のうえにある……


朝五時九時の超早番勤務を終え、神経科へ。


ことあらましを涙ながら報告する。


また同じクスリが処方されるだけなのだが。


この先生は増やせといえば増やし減らせといえば減らす。なにもアドバイスはくれない。たった五分たらずの会話で三百点の精神療法にあたる。


馬鹿げている。


もう1年以上たち、このクスリは止めたいので減薬を急ぎたい。


世の中の犯罪者はけっこうな割合でこれと同じクスリを服用している。
レインボーブリッジをくぐろうとしたハイジャック犯もたしかパキシルではなかったか?


帰りに、右折禁止場所を右折、張っていた警察ににつかまる。罰金五千円。今日は朝から働いた分は全部宙にきえた。

離脱症状

2009年10月16日

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抗うつ剤のパキシルを切らして一週間がたち……

休みがとれずなかなか病院にいけない。


急に止めては危険だと聞いている。離脱症状らしきものがでてきた。


体が数秒ごとにびくっとけいれんする。電気が体を流れている感じ。


あと、些細なことで悲しくて涙が止まらない。馬鹿みたいだが、職場の植木の花をみただけで切なくてだらだら涙を流している。


はたから見れば馬鹿みたいだが、悲しいから仕方ない。


またなにを見ても、明日地球が終わるかのような漠然とした恐さを感じる。あるいは死後の世界をさまよっているような、取り返しがつかない悲しい孤独な感じ……


すべてはSSRIの離脱症状だと思われる。


どれだけ日常のみみずくの人格が、このくだらないクスリに支配されていたかがわかる。


くだらない1日3錠のクスリがみみずくの精神の一方を支え、一方を侵している。

2009年10月13日

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……醜いことはまだまだいっぱいある。


若年性アルツハイマーで言葉もほとんど話せくなったご入居に みみずくはいつものようにミキサー食の食介をしていた すると……


「あら、あのひとはスプーンで食べさしてもらってるよ。……かわいそうだねぇ」囁きが聞こえる。


みみずく


(あなたもウンコは漏らすし!!毎日下着を濡らすだろうよ!!)


こころのなかでそう思ってしまった。


なんてこった…


ああ…なんてことだ


すべて老化と脳の萎縮がもたらす行いならば、万人にむけていっておきたい。


誰しも、自分が確かな自分でいるうちに、よくよく次のことを考えておくべきだ。


自分は、美しく老いることもできるし、醜く老いることもできる。

6連勤の幕開け

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今日は6連勤の第一日目、しかし慣れない家政婦が入ったり、なんだかんやで、時間までに仕事が終わらずなかなかどうして……きつかった。


認知症で、笑顔をふりまき徘徊するお年寄りからは、励まさることが多い。


トイレで


「○○さん、お腹に力入れて!ぐーっと」


「"ぐー"」


「えーと、ごめんなさい……"ぐー"っ言うんではなくて、こうぐーって力入れるんです"ぐぅーぐーぐー"って」


「"ぐぅーぐーぐー"」

「……でないかい」


「ええ。でないんですよ。ここんとこにね(肛門をさし)、割り箸が二本はいってるんですねぇ」


認知症もいろいろで、なかにはやっぱり疲れてしまうものもある。


四六時中まわりを監視して他人へ嫌みや悪口をいったりする方。性格の悪さが老いて全面にでてきている。


普段は丁寧でやさしいが、時々目つきがかわり、まるで違う人になったように暴れまくり叫びまわる人もいる。(みみずくのいった精神病院でこれくらい暴れれば保護室へ監禁される)


排便の介助などは、プライドにさわり、人によってはいやがられる。介助中に罵倒されたりもする。こうしたときは頭でわかってもどっと疲れてしまう。


……家族もだ。毎日のように手伝いにくる家族もいる。たまにしかこれなくとも、悩みぬき向き合っている家族も多い。ろくに来ないし、必要なお金も惜しむがいうことはいう家族もいる。


要するに問題があるからこんなグループホームが必要ないのである。


たくさんの善と悪がひしめき合って。人間の美しいところと醜いところがむき出しになって。


醜さだけに目がいってしまうと、この仕事はまず続かない。


明日も気合いを入れて頑張る。


自分のために。

菜の花と宇宙

2009年10月8日

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去年の冬に植えた善光寺菜。


春種をとって箱にしまっておいた。


それがきょう、台風が通りすぎたあとの日差しをあびて芽をだした。日いっせいに。


蒔き主がどれほど酷い今日だろうが、彼らには関係ない。


このうちいくつがまた同じように花をさかせる前に、虫にたべられるか、寒さに枯れるか、日照りに枯れるか。


密集して芽ぶいたもの、ふたばが白く元気がないもの……


こうして不平等からはじまり、拡散し、また新たな平等の一点に凝縮する。花をさかせ実を結ぶ。

宇宙の道理の縮小版。


人間はどうか?


生まれながらに欠けているぶん、誰かにあいたくて、何かにあいたくて、生きてる。

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病院から帰った夜、二次試験の結果を渡され、両親と面談。成績は1500数人中、限りなく最後だった。体調不良かなにかで棄権したひともいるだろうから、不合格者のなかで最低点をとった。


それよりも、衝動で大量のパキシルと精神安定剤をのみ、タバコを飲んで死んでしまおうとした月夜のみみずくにはもう、受ける資格はない。大勢の人に迷惑をかけた。生きることを放棄しかけた……


最低1ヶ月の断酒と、家族の縁をきらないことを条件に、家をでることになった。


この3日間でなにが起こったのか自分でもわからない。


こんなことになるなんて、考えてもみなかった。

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気がつくと警察官二人に抑えつけられていた。
兄がが通報したよう。


僕はさんざん暴れ、あげく、風邪薬をビンごと飲んだ。


救急車にのせられ、それから覚えていない。


次に気がついたのは、このまえ見舞いにいった、病院のベッドの上だった。


致死量の二倍のタバコものんでいた。


活性炭のどろどろした液体をのまされ、そのまま寝たか気をうしなった。

いま家にいる。仕事もはじめて休んだ。そのまま入院してればいいのに、と兄がいった。

2009年10月6日

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帰宅後、不合格を責められ。しばらくはなにもいわず聞いていた。でもやっぱり耐えられなかった。親が許せなかった。机をあしげりでひっくり返し。母につかみかかる。父と祖母がとめる。


「ででいく!」


部屋にもどり。パキシル14錠、テシプールあるだけ。レキソ十錠、あのひとがそうだったように安ワインで飲みくだした。あのひとはそれを吐いて切腹して死んだ。


タバコを紙ごと四本たべた。致死量は二本ときいている。


死ぬだろうか。
死んでいい。なすべきつとめはなした。


こんな役立たず死ねばいい。死ね。


僕は、多くのひとを助けた。だからもう役割は果たした。いま死んでもいい。


寂しい

夕方 更衣介助中の雑談

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「いつまで、ここにいられるのォ?」


月夜のみみずく「いつまでもいて、いいんですよ」


「だってコレ、かかるんだろぉう……おれ、財布わすれてきちゃった……」


みみずく「大丈夫……○○さんは昔、いーっぱい働いたから、そっから少しずつ引かれてんの。ここは安いし、お金は大丈夫」


「でも仕事しないで、世話になってばっかで、これからどう生きればいいのぉ?」


み「うーん……」


94歳からの質問。


み「○○さん、じゃあ、ここの職員になるってのは? 時給は安いけど」


「力がないからだめだぁ」


み「じゃあ、頭をつかって何か仕事を……」


「頭ないからだめだぁ おら百姓の子だから」


み「あ、じゃあ、野菜をそだてましょう! 」


「スイカなんていいなァ2つくらいはなるかなぁ」


み「スイカ?今年は下の階でスイカ作りましたよ。でも二階じゃどうかなぁ。いま秋だから秋まきの、なんかないでしょうか」


「大根か。でもおれ、百姓だとも手伝いしかしてない」


み「ようするに菜っ葉系ですね!!!できますよ。
失敗しても、春は菜の花」


かくて不安は解消でき、ひとつ、仕事ができた。

あした別れみち 合格発表

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本日、職員全員出勤で回転ずし企画とミーティング。


毎日、介護職のやりがいや厳しさ、奥深さを知る。具体的な問題が山積している。


ここのグループホームの状況は、本来あるべき姿から変わり、現況は特別養護老人ホームに近いらしい。開所五年で、人は変わり、多くが変わった。


そんな忙しい時期、明日の午後に、教採の合格発表がある。受かれば来年から教員に挑戦してみようと思う。だめなら介護の資格をとってスキルアップを目指そうと思う。


実はみみずく、これまでの人生大きな試験に落ちたことがない。しかし今回はてごたえなし、厳しい。


しかしどちらに転んでも事前に道は用意してある。むかしは<落ちたら終わり>と思うような性格だったからうつ病になった。


いまはたとえ落っこちてもこんな風に思うようにつとめる。


「試験に落ちたら半分は、試験官がそのひとの魅力を引き出せなかったわけであり、大粒のダイヤが入った原石を捨ててしまったようなもの。惜しいことをしたものだ。はっはっは」

「五カ年計画。今年は下見、来年はおためし」


「受かるまで、ほかの教師が知らぬ世の中を知る貴重な時間」


そのくらいに思っていた方が打たれ強い。


まるで、落っこちるのを願っているみたいだ。