乱れた文字で書かれた「資料」を見ると、その人の連れは死んだらしい。。
自らの心を、固い殻で覆い守るかのように、(老いたる身ゆえの)視界の淀みが、連れの幻を、みせる。白い、まぼろし。幻覚。
夕餉の支度のころ、小さな童が2人いる、連れも、近くにいるという。連れが口をきかないけれど、暗くなるまでに一緒に帰りたいという。
人間の五感が知覚できるのは 自然科学でわかっているだけの(数値で表せる現象の、あるいは波長の)、さらにそのまた一部だとすると、あながち幻覚が幻といいきれるのかみみずくはわからなくなる。脳の萎縮が、すべての機能の低下を意味すると……いいきれるのか。
本当のことは言えない。といって場あたりの嘘をつくこともはばかる。生活を支え、養護するのが、いまのみみずく仕事。安給料でも、契約でも派遣でも臨時でもなんでも、責任はかわらない。
誰の脳の機能も心臓の鼓動も、すべての臓器細胞もいずれは衰え、やがて死ぬ。恒久的に消える。生きている人でそれを経験した人はいないのだから、若輩者のみみずくは、体の一部になったり、話を聴いて差し上げることしかできない。
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