夜があけたら、僕はこの住み慣れた あけぼの寮から出なければならない。信州大学教育学部妻科寮……
もうここにはいられない。そんな日がとうとう来てしまった。想像だにしなかった。それがこんなにも嫌なことだなんて。すごく嫌だ。とても笑って別れることはできない。辛くしんどい時間もたくさんあったけれど、いま僕は寮を出たくない。もっともっといろんな人と関わるべきだったのに。それが今年一年できなかった。なぜかできなかった。
明後日から先の見えない夜の大海原に放りだされる。実家にもどるけれどそこはもうすでに自分の居場所ではない。飛びたつとは決して言えない。巣立つ。それがみみずくにとって似合うことば。みみずくはまだろくに飛べない駄鳥の部類だから。
そういえば……いま手元に玉ねぎと、小麦粉と、青のり、何ヶ月も冷凍備蓄していた豚肉の100%脂身が余っている。あとお酢とソースと醤油。これだけで、何が何でも食いつなぐ。お好み焼きというかお残り焼きを作ってひとり暮らし四年間の集大成である、ささやかな夕食を作る。ひとりで黙々と食べる。
自炊するときはいつもひとりだった。ひとりよがりの独善的料理。僕はそれでよいと思っている。僕は人がなにを言おうと料理はうまいと確信している。なぜなら自分が満足するものしか作らないから。
明日は、あとくされなくかつ潔く、ささっと出ていこう。人によそよそしく見送られるのは嫌だから。もっともわざわざ玄関まで見送ってくれる人がいればの話だが。
2 コメントはこちら:
一足先に神奈川で待ってる!!
遠くからやけど、おれはいつも応援してるからな!日本には5月に帰るから、帰ったら会いに行くわ!ほなっ!
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