それは「記憶の喪失」という問題。
1 アルツハイマー病になって、次第に現実から乖離してゆく妻を殺害した刑事。その真の理由を探ってゆく物語。記憶を失うことは魂が滅ぶことなのか……『半落ち』
2 大企業企業戦士がある日、もの忘れが激しくなり、それから少しずつ記憶を失っていく姿があまりにも辛い。けれども……『明日の記憶』
みみずく、珍しく、誰かに観てほしいと思った。でもうまく言えない。ぜひ観てください!
映画というフィクションではあるけれど、ふたつの作品とも、誰しもが直面する大切な問題を抽出している。人間の肉体は生まれて十数年成長し、あとは衰退してゆく。医学はそれを遅らせることはできても、止めることはできない。それを自覚することで、もう一度、自分の価値観を見直せるのではないか。
記憶を失うこと、いいかえれば脳が萎縮していくこと、その人の尊厳が消えていくこととは違う。
心臓が止まること、脳が死ぬこと、いまちょうど盛んに議論されていることだが、それはあくまで人間の作りだす基準に過ぎない。だから不確実だ。
確かなことは、人は死んでも、時に生きているときと違ったかたちで、またはそれ以上の影響を世界に与えるということだと思う。今日の自分のたったひとつの〈ことば〉でも、世界は変わる。たとえそれが目に見えない僅かにであっても、明日の世界は変わる。
写真は『明日の記憶』から 現実から乖離しはじめた主人公が、自らの意識と意志で、入所施設に訪れたところ。
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