今宵も月夜に導かれ、

あっちの止まり木へふわり、こっちの止まり木にふわり。

いったいどこへ行き着くのやら。

そんな「月夜のみみずく」の自分のための備忘録

連続する事件

2011年5月5日

 

守秘義務なのだが。

日記に書かないとどうかしてしまいそうなので、書く。

人は言い訳や正当化をしなければ、潰れてしまう。

以下はあくまで空想の話として。


* * *

一件目

おとといある介護者は、
入居者に雑用を頼まれ居室に入ったわずかの間に、
別の人が立ち上がり、ばったりと転倒し頭部を強打、場所は不明だがどうも臀部あたりを打ち付けた。

過去に転倒があり、リスクが高いならば、必ずマーク(常時見守り)をしたのだが、異動してから得た少なくない情報では、すくなくともその人のリスクは予測が困難なものだった。これは言い訳だ。

明朝出勤の看護師に再度のボディチェックを申し送ってその晩日付が変わる頃帰ったが、事態は危惧すべき最悪の事態、すなわち救急搬送され入院と手術となった。

事故のあとこきあに引き継いだ夜勤の人はさぞかしいやみを言われたであろう。

「この病院にまともな医者はいないのか」
「○○を呼んで、文句をいいつけてやる」

ひょっとしたら平手打ちもばしばし食らったかもしれない。

特別養護にお金を払って入るということは、お金で介護の困難を委託するということだ。対応が極めて困難な利用者がいて、はじめて経営が成り立つといわざるを得ない。


さて事故現場にいた発見者はその介護者であり、責任を負わなければならない。当然のことだが、施設内の報告書をはじめ、行政にも届出、ミーティングの議事録など、とても業務内では終わらない仕事が、うわづみされる。


原因と対策は無数に挙がる。
しかし、それを煮詰めて煮詰めて、最良の事故報告書をかいたとて、
結局福数人を一人だけでで見ることに限界があることに、
触れる人はいないし、それは、責任転嫁のいい訳になってしまう。

仕事が増えることが不満なのではなく、
人を転ばせ、その人の歩く能力を永遠に奪ってしまうかもしれない恐怖と重圧・・・

だれしもがが、同じ状況にいたら、同じ事故は起きたと、なぐさめの言葉をかけてくれる同僚がいるのは救いだった。

だが、その場にいたのは紛れもないその人ひとり。じぶん。

介護の仕事において、過失によって人を殺すこともある。何千万円という賠償責任をおうことも実例として身近にある。

しかし、せめて休日返上して見舞いに行くことしかできない。

* * *

二件目。

今日、早朝から通常業務と、加えて昨晩の事故処理に追われて、ようやく帰ろうとしたら、すれ違いに「こきあさん、今朝Aさんの入れ歯入れましたよね」

 ?


こきあ「入れたと思います…(断言できないが95%くらいの確率でまず間違いなく自分が入れたと思います)」

義歯は見つからなかった。職員7名が二時間かけてありとあらゆる場所を探した。

「最後に義歯を見たのはあなただよね。あなたが来てからほんとトラブル起きるよね」

そういわれると責任は自分にあるらしい、ないしは負うべき運命にあることが感じられた。

集積所に出したごみを漁る。

生ゴミにまぎれている可能性が高いので、同僚は生ゴミを漁る。

自分はこれで義歯がみつからんければ、いよいよ自分の責任だと思い、
転倒の件もあって心苦しかった。

何かあるたびに自分の過失にされるのではないか・・・

同僚が手をつけず去っていった袋を見る。

手のつけられなかった、汚物の入った袋を一つ一つ開けていった・・・


* * *


汚物とは排泄物である。オムツであるとかそういった類の。

汚物といえば上品だ。相当の言葉をつかうと、過度の下剤投与によってもたらされた下痢便の山、うんこまみれのごみの山である。便を処理することは介護職にとって日常茶飯事であるが、無秩序に集積された便の山を相手にすることはそうない。

ここで気づいたのは、ハエは、汚物の袋よりも生ごみの袋のにおいをかぎつけ集まってくるということだった。確かに栄養学的に見れば、排泄物より、台所の生ゴミのほうが、消化吸収されていない分栄養価は高いはずだ。自然のことわりである。

どのくらい時間がたっただろうか。

義歯は見つからなかった。

異動してから間もないのに、早くも3件目の事故異常事態報告書の構想を練る。


* * *


別に疲弊しているわけではなく、むしろ、単調な業務や、おとといの転倒事故にに比べれば、気が楽だ。

けれども憔悴していた。ここ数日働きづめであったから。

帰宅してまもなくして、電話が鳴った。

* * *

同僚「あったよー」

こきあ「あった?」

同僚「袖の下にはいってた。みたんだけど確認しきれてなかったみたい」

「それはよかったです、はい本当に」


* * *

教訓。


1 経験から入れ歯紛失事件は、当事者から半径1メートル以内で見つかる可能性が90パーセント、初期段階でそれに気づかず、多大な時間を浪費するケースが90パーセントということ。

2 毎回比較的初期の段階でゴミ漁りをするが、それは、収集車に持っていかれるという最悪の事態を想定してのことだと思われるが、過去の事例から、ゴミにまぎれる可能性は、非常に少ないということ。

3チームワークにおいて事故の責任が一人になることはありえない。責任は全員にあり、最終的には上司や管理者が負う。しかし当人は自責の念に駆られることが多いので、もし仲間が事故を起こしたら、全力をもってその人を、フォローする。

仲間が責められていたら、自分にも責任がある、といいたい。

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