夕飯も終わり、台所で洗いものをしていると五分おきに話かけてくださる方がいる。「今晩、こちらに泊めていただけるの?」と。
み「はい、大丈夫ですよ、泊まって行ってくださいね」
「お部屋はあるの?」
み「はい、ちゃんと一番奥の部屋が○○さんのお部屋ですよ」
五分後…
「今晩、こちらに泊まるの?朝はいくじ?」
み「はい、安心して泊まって行ってくださいね。朝はだいたい6時くらいです。」
「そしたら帰るの?」
み「天気がよかったら帰るかもしれません」
「ありがとう」
五分後……
「お兄さん、今晩はあたし泊めていただけるの?」
み「もちろん大丈夫ですよ。存分に泊まって行ってください」
「お部屋はあるの?」
み「はい、○○さんのお部屋はね、奥にあるから寝るときにご案内しますね!」
「お世話になります。あたしここが悪いから、ごめんね」
み「いいえ。またわからなくなったら聞いて下さい。」
家はないので帰ることはできないし、家に帰れば幸せとは限らない。
こんな会話を何回も繰り返し、消灯の時間がくる。さあみみずくも帰って寝るかな……
すると別のかたが部屋から服を着込んで、出てこられる。
み「あら、××さん、そんなに着込んで暑くないですか?」
「大丈夫。あたし今から帰るの」
み「あらら。あれま。こんな遅くに帰っちゃうんですか。」
「すぐ近くだから」
さっさと自分でフロアの鍵をあけ、エレベーターで降りようとする。
み「暗いし玄関もしまってるかもしれないので、僕も一緒にいきます」
クリスマスの寒い夜、こうしてみみずくは××さんと手をつないで建物を二周まわる。別のユニットにもいく。そこの夜勤者さんにたしなめられたりする。
なるべく話題をそらせ……
み「寒いからレモンの紅茶でも飲んでいきませんか?……はい、どうぞ」
「すごくおいしい、ありがとう。でも帰らなくちゃ」
さらに夜の庭を雑談しながら一緒にまわる。
み「うーん、どうも門があいてませんねぇ。安全対策ですねぇ。明日の朝、あけてもらうことにして、今夜は××さんのお部屋に泊まっていかれたら? そうだ! それがいい! そうしましょう!」
「そうね…」
この仕事をしていて、だいぶ腹のすわった演技ができるようになった。警察を呼ばれるまえに、たしなめることができて、ほっとする。
こうしてクリスマスは残業で終わった。
神に感謝。
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