今宵も月夜に導かれ、

あっちの止まり木へふわり、こっちの止まり木にふわり。

いったいどこへ行き着くのやら。

そんな「月夜のみみずく」の自分のための備忘録

ある料理研究家の残された手記より

2011年2月26日

 

「今後の小麦価格上昇する今という、これとない機会に際して。
私は覚悟を決め、ここに、秘伝のレシピを公開したい」

by .kokia.
Japanese translation rights arrangeed with the Author

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以下、訳文。


このレシピは完全にオリジナルであり、おそらくは世界中の誰も知らない。


それがかりそめにもあなたの未熟な生活経験から、誇張に聞こえるのなら、いいかえよう。すくなくとも、私が生きた24年間、このパスタの味に勝る味を再現したパスタを食べたことがない。


それの味を忠実に再現する方法を、もし一人の利己的な人間が独占するならば、少なくとも関東近郊の小麦を主たる原料にする外食産業は、致命的なダメージをうけるであろう。パート社員はクビになるかもしれない。正社員でも、来夏のボーナスはカットだろう。サイゼリアとか。

* * *


しかし、そんなことは許されない。そのために、あえてこのパスタの調理法を、速やかに全世界にむけ、公開しなければならない。

いつの時代も重要な発見は、わずかな時間差においてなされるものだからだ。そしてそれが、かつてダイナマイトのように戦争のため、あるいは平和のために利用されるかは、発見者の意思と行動力に大きく関係する。

神に誓って。私はこの料理法を、善意ある温厚な市民のために役立てたい。


* * *

料理研究家としてのこれまでの人生を告白しよう。


私は親を棄て、恋人も棄て棄てられ、仕事も棄てつつ、しかしして、これまでの人生の大半を、このパスタの研究に第一をおき、費やしてきた。極寒期にもしぶとく生き残るゴキブリと闘いながらこの狭いアパートにおいて。

しかしながらそんなことよりも、このレシピを公開することにより、業種を理由に、所得をに制限された一人暮らしの人間の生活を救うことのほうを私は選んだ。それは私個人というより、なんらかの神がかった意思を感じて。


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料理名

「具なしパスタ」

パスタは500g 97円の商品名:地中海パスタ。どんな安いパスタでもかまわないということだ。しかし、この価格で入手できるのは今のうちまもしれぬ。

これを主食とすると、米より、芋より安い。


材料は、ほかにマヨネーズ、ニンニク、サラダ油、塩コショウ、コンソメである。


通常この材料だけでパスタを作る場合のやり方は、万人ほぼ同じである。

「ゆでたパスタに、ニンニクを刻んで油でいためたものをまぜる」という。
しかしそれでは、この「具なしパスタ」の10パーセントの味も表現できない。

ポイントは普通にゆでたパスタに、ニンニクを別の形で調理したものを加えることである。


サラダ油を100ml空ビンにいれ、それに細かく切ったかつぶしたかニンニク2~10粒をいれ、湯煎をかける。<アホエンオイル>。ニンニク由来のアホエンという物質は油になじみ、なおかつ100℃を越えると、理論的に地球上では破壊されてしまう性質を持つので、通常の料理方法ではほとんどど生成されない(アホエンオイルと検索して調べれば大体このとおり)

ゆでたパスタにそのアホエンオイルと、塩コショウ、マヨネーズ、コンソメを加えれば、それで完成である。


これを読んでいても到底その味を想像することはできない。
実際に作ってみなければ!

栄養価はジャンクフードであるが、空腹を水意外で満たすカロリー補充という点においての食事を余儀なくされている諸君にとっては、さほど重要なことではないだろう。

付言するとアホエンは記憶力をたかめ、認知症すらを予防するという可能性が近年、世界中大企業のゴキブリのいない研究所で証明されつつある。

なにより、この料理は、お金がなくてもできる。

ガス代がきになるなら、パスタはゆでるのではなく、必要最低限のひたひたの水で茹で、水をすべて蒸発させてしまえばいい。

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信じるか信じないかはあなたしだい。これを知ったら長期保存の点でも優れたパスタを買いだめしておくことをお勧めする。

この味は、あなたの主食を変える可能性を持っている。

この食料価格高騰の危機に果敢に挑み、乗り越えるあなたを私は信じている。

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