テーブルに広げた。
最後に正月の暖かい家族の呼吸と温もりをすってから、どれくらい暗い倉庫にしまわれていたのだろう。
描かれている貴族やお姫さま、ぼうす、みんな疲れているように見えた。
もともと、この百人一首は、さるご入居が自宅から取り寄せたものだった。しかし、
一度も使われることなく、いまや、もう持ち主の認知の度合いも麻痺も進んでしまった。
それを、ふと取りだし、昼食後の不穏な、そしてけだるい雰囲気のリビングに持ち出した。
物には命が吹き込まれている。
生きているということは、それが、世界に影響を与えるということだ。
だから生きている。
花の色は・・・適当にとった札の、上の句を読む。小野小町の有名な句……
すると…
…うつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに
次々と下の句が……、一分前の短期記憶すら怪しいお年寄りの口に、流れるように……
それは魔法だった。
いにしえの歌人が残した魂の結晶。
家族や子どもたちに囲まれた、正月のひと時の幸せな記憶は時空を越えて…
テーブルを囲む人たちを、ほんわかと明るく照らしだした。
今宵も月夜に導かれ、
あっちの止まり木へふわり、こっちの止まり木にふわり。
いったいどこへ行き着くのやら。
そんな「月夜のみみずく」の自分のための備忘録
2010年10月3日
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