今宵も月夜に導かれ、

あっちの止まり木へふわり、こっちの止まり木にふわり。

いったいどこへ行き着くのやら。

そんな「月夜のみみずく」の自分のための備忘録

小倉百人一首

2010年10月3日

 

テーブルに広げた。

最後に正月の暖かい家族の呼吸と温もりをすってから、どれくらい暗い倉庫にしまわれていたのだろう。

描かれている貴族やお姫さま、ぼうす、みんな疲れているように見えた。
もともと、この百人一首は、さるご入居が自宅から取り寄せたものだった。しかし、

一度も使われることなく、いまや、もう持ち主の認知の度合いも麻痺も進んでしまった。

それを、ふと取りだし、昼食後の不穏な、そしてけだるい雰囲気のリビングに持ち出した。

物には命が吹き込まれている。

生きているということは、それが、世界に影響を与えるということだ。
だから生きている。


花の色は・・・適当にとった札の、上の句を読む。小野小町の有名な句……

すると…

…うつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに

次々と下の句が……、一分前の短期記憶すら怪しいお年寄りの口に、流れるように……

それは魔法だった。

いにしえの歌人が残した魂の結晶。

家族や子どもたちに囲まれた、正月のひと時の幸せな記憶は時空を越えて…

テーブルを囲む人たちを、ほんわかと明るく照らしだした。

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